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2021年1月6日水曜日

古書探訪 vol.1

寄稿したテキストを加筆修正、再掲します。

“Project Gutenberg” (プロジェクト・グーテンベルク)のサイトから手作り石けん愛好家の皆さんにおすすめの古書を紹介するコラム全5回の連載を担当しました。

テキスト中のタイトルをクリックすると、プロジェクト・グーテンベルクのサイト内の電子書籍をブラウザ上で閲覧できます。

プロジェクト・グーテンベルクについての紹介記事は、"古書探訪 はじまり" をご覧ください。


vol.1
ハタヤ商会 AYA

『調香の技法』セプティマス・ピエス著

“The Art of Perfumery”  G. W. Septimus Piesse, Lindsay And Blakiston (1857)

https://www.gutenberg.org/ebooks/16378



19世紀の調香書を紹介します。著者のピエスはトップノート、ミドルノートなどの香りの揮発速度による分類「ノート」を考案した調香師です。

この本に記載された、人工の香料や素材が少ない時代の香水やコスメティックのレシピはまるで現代の手作りコスメのようです。精油とアルコールで作る香水や、オイルとワックスで作るリップクリームなど。今ではあまり見かけない素材も使われてはいますが、レシピを再現しようと思えばできるなんて嬉しいかぎりではありませんか。


おすすめポイント

1. 実はタイトルが長い

扉に記されたタイトルは『調香の技法および植物の芳香を採取する方法 ーハンカチーフ用香水、匂い粉、嗅ぎ薬、歯磨き粉、ポマード、コスメティック、芳香石けん等々 各種製造法』

タイトルを目にするだけで読みたい気持ちがこみ上げてきますね。


2. 試したくなるレシピが多数

シプレ水、ハンガリー水、オー・デ ・コロンなどの古典的な香水をはじめ、塩やアンモニアベースの嗅ぎ薬、アルコールランプを用いるルームフレグランス、クリーム、匂い紙などさまざまな用途の香水やコスメティックのレシピがたくさんです。


3. 石けんも登場!

“Section Ⅷ” (8章)は丸ごと石けんの章です。くわしい石けんの製法は省かれていますが、石けん素地が数種類そして石けん素地を組み合わせて精油で香りをつける石けんのレシピが紹介されています。アーモンド・ソープ、薬用石けんに透明石けん、石けんの着色の方法など、きっと興味を惹かれることでしょう。石けんの形成工程を表した古風なイラストレーションもすてきです。


19世紀の香りを再現してみましょう

EAU DE COLOGNE, La deuxième qualité(オーデコロン 二等品)


本書の SectionⅥ の中ほどに記載されたオーデコロン のレシピを紹介します。

賦香率は2%にも満たない、現代だとオーデコロンではなくオーフレッシュに近い軽い仕上がりです。


材料

アルコール 90度 50ml

プチグレン 2滴

ネロリ 1/2滴

ローズマリー 2滴

オレンジスイート、レモン、ベルガモット 各4滴


作りかた

材料をよく混ぜて2−3日寝かせたのち、香水瓶に移す。


オリジナルのレシピは大バッチですから個人で作るのに実践的なバッチサイズにアレンジしています。

アルコール濃度の記載がないため  “EAU DE COLOGNE, La première qualité ” (オーデコロン 一等品)と同じ60オーバープルーフ(約90度)を用いました。

帝国単位からメートル法へ換算後に、きりのいい数字に変更しました。


初出  "soapy soaping vol.2" 2020年5月10日発行


“The Art of Perfumery” のペーパーバック版は、こちら

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